2016年6月14日火曜日

  2016年度男女共同参画週間事業  働くこと生きることをあきらめない社会をめざして~女性活躍を考える~を実施しました。           


「男女共同参画週間事業」とは、男女が互いにその人権を尊重しつつ、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会をめざし、毎年623日から29日までの1週間を「男女共同参画週間」とし、全国の地方公共団体、男女共同参画推進センター、女性団体等により講演会、イベント、展示会等が実施されます。

 

65日(日)男女共同参画週間事業として水無田気流さん(詩人・社会学者・國學院大学経済学部教授)を講師に迎え、「働くこと生きることをあきらめない社会をめざして」をテーマに講演会を開催しました。87人(女性81人、男性6人)の皆さんにご参加いただきました。

 

 
 
「女性活躍」が国の大きな課題となっていますが、時間に追われる子育て中の母親、不安定な非正規雇用の増加、シングルマザーの貧困等、日本は女性がまだまだ生きにくく働きにくい社会といえます。女性のおかれた厳しい現状は、男性にとっても無関係ではなく、もはや個人では解決が難しい社会全体の大きな課題となっています。

水無田さんはデータを交え、女性の「時間貧困」、男性の「関係貧困」について語りました。

 

 

●働く女性をめぐる現状は過酷

正社員の女性が第1子出産を経て正社員を継続する割合は2割強程度。これは30年間変わらず、日本は女性が働き続けにくい社会であることを示しています。また女性の管理職が約1割と、他の先進諸国と比べて低水準であり、女性の意見が反映されず、女性が働き続けられる環境が整いません。非正規雇用の若年女性(1534歳)の8割が年収200万円以下、大卒以上高学歴女性3割不就労という現実があります。

 

●シングルマザーの貧困

母子世帯の8割が就労していますが、そのうち5割近くが「パート・アルバイト等」で、総所得は平均243万円(子どものいる一般世帯の36%)。日本のひとり親家庭の子どもの6人に1人が貧困です。

「子どもは生まれてくる家庭を選べないのに、その後の人生を家庭環境に左右される」という不平等が現存し最低限の権利が保障されていません。シングルマザーは家計責任+家庭責任の負担で極度の「時間貧困」に陥りがち。そして「時間貧困」は日本の女性の多くが抱えた問題でもあります。

 



●理解されない働く女性の忙しさ

夫婦の家事総量を100とした場合、妻の負担割合は85%超(過去20年近くほぼ変化なし)。乳幼児をもつ世帯で「18時間以上家事・育児をしている」と認識している妻が72一方、そう認識している夫は47%という結果となっています。このように日本の既婚女性は高い家事水準、育児水準を維持しつつ働き続けているにもかかわらず周囲にその忙しさが理解されていません。先進国で最も「働きバチ」なのは日本のワーキングマザーではないでしょうか。

 

●女性活躍と女性関連政策

「活躍」が期待されている女性たちですが、現状での重い「家庭責任」と「男性正社員並の就労」は両立できるのでしょうか。1986年の男女雇用機会均等法施行、派遣法施行、第三号被保険者制度導入から、2015年の女性活躍推進法成立、派遣法改正に至る女性関連政策は、常に「理想としての平等」と「経済的な不平等」が同時に進められてきました。1985年までは女性の約7割が正社員でしたが、現在は約6割が非正規となっています。

 

●シングル女性の行方は

もし、今の日本で女性が「結婚も仕事も出産も育児も」というライフコースを「完璧に」こなすならば、22歳大学卒業までに子育てと両立しやすい会社に内定3年間血眼で婚活し25歳までに伴侶候補ゲット交際3年以内にプロポーズにもちこみ28歳婚約29歳結婚妊活し30歳で妊娠、31歳までに第1子出産妊娠中から保活して託児先確保、32歳で職場復帰→第1子は1年以内に卒乳し33歳で第2子妊娠34歳で第2子出産…、これらをこなしつつ妊娠予定の30歳までにマタハラにあわず産休・育休を取得する程度のキャリア確立…。これを実現できる人はいるのでしょうか。女性活躍推進は、ある意味「日本女性超人化計画」「全ての女性が輝く社会→全ての女性がギスギスしてギラつく無頼化社会」ともいえます。

 

 
 
 
●女性の「時間貧困」、男性の「関係貧困」を乗り越えるには

日本人の「自殺」「孤独死」「引きこもり」の7割が男性で、男女の平均寿命格差は6.4年となっています。日本人男性が社会的孤立に陥りやすい要因としては①根強い男性の家計責任意識②高齢男性は近所づきあいが乏しい③生涯未婚率急上昇などがあげられ、その背景にあるのは、男性の「就労第一主義」といえます。

この問題を乗り越えるためには①女性を企業のメンバーに②男性を地域社会のメンバーに③「標準世帯」を前提とした社会制度の見直し、が必要となります。そのためには、同一労働同一賃金、時短、有給取得率の上昇など全方位的な雇用環境の改善が求められ、男女問わず総合的な働き方・暮らし方の見直しが必要となります。

 

 
アンケートより

・女性の社会での活躍がすすまないのは、女性自身だけの問題でなく、男性や制度などとも関わりがあることがわかり、問題を見る視点が増えました。

・心強いお話をありがとうございました。社会学に興味がわきました。自分にできることを少しずつ試していきたいと思います。・笑いに厳しい関西(大阪)の地で、おもしろ楽しく、でも日本の大変な問題を分かりやすく解説していただけてとても有意義な時間になりました。

・特にシングルマザーのおかれている実情について、政策が必要だと痛感しています。結婚というワクにとらわれない生き方を、認める社会になるために、何ができるのでしょうか。考えたいです。

・女性活躍問題は女性だけの問題ではなく、男女の総合的な問題だと気づかされたことはたいへん意義がありました。

H.O